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溶接棒の種類や選び方について解説します。

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ここ数年で、DIYで溶接をおこなう方が増えているようです。

そこで気になるのが溶接棒の種類や種類ごとの違い、選び方ではないでしょうか。

ということで今回は、溶接棒の種類や選び方について解説していきたいと思います。

これからDIYなどで初めて溶接作業をおこなう予定がある方は、ぜひ最後まで読んで参考にされてみてください。

溶接棒(被覆アーク溶接棒)とは?用途について

溶接棒は、金属と金属を溶接する際に必要な金属の棒です。

ただ電極として使うだけではなく、母材とともに溶融する特徴があります。

そして溶接棒は被覆材と金属心線に分かれており、どちらも溶接において必要不可欠な存在と言えるでしょう。

溶接棒(被覆アーク溶接棒)の被覆材

溶接棒(被覆アーク溶接棒)は、アーク溶接の際に使用される金属の棒です。アーク溶接は電気を使うため、溶接棒は電極として機能します。

具体的に溶接棒の特徴と機能も見ていきましょう。

まず挙げられる特徴は「被覆材」です。溶接棒は金属心線の周りに、被覆材という材料がコーティングされています。

実はこの被覆材、アーク溶接中に重要な役割を果たしてくれるものです。

  • アークの安定化
  • 保護ガスの供給
  • スラグの形成

被覆材があると溶接アークを安定させる効果があり、均一な溶接ビード(溶接後の模様)を形成してくれる効果が見込めます。

また被覆材が溶けるときに生成されるガスは、溶接プールを空気から保護。酸化や窒化を防ぐ役割を果たします。

また被覆材は溶接時、スラグという不純物の塊を生成。不純物といえば聞こえは悪いですが、溶接ビードを覆って冷却中の酸化を防ぐ役割があります。

最終的には容易に取り除けるため、スラグの形成はメリットが大きいです。

溶接棒(被覆アーク溶接棒)の金属心線

被覆材の内側には、溶接の際に溶けて母材と結合する「金属心線」があります。

金属心線の材質によって性質が異なるため、溶接する材質によって選定を変えなければなりません。

アーク溶接ではこの溶接棒を使い、溶接したい材質と溶接棒の間に電流を流します。すると高温のアークが形成され、溶接棒の端と母材が部分的に融解。

溶け合った状態で冷却されるので、そのまま結合できる仕組みです。このとき溶接棒の材質選定を誤ると、溶接の仕上がり(品質)が悪くなってしまいます。

どういった溶接棒を選ぶかは、溶接する材質によって変えなくてはなりません。条件でも変わるため、溶接棒の選び方は事前にしっかり押さえておきたいところです。

溶接棒の用途

溶接棒の用途を見ていきましょう。おもに使われるのは下記の6点です。

  • 金属の接合
  • 産業用途
  • 農業分野
  • アートやクラフト
  • 車両の改造
  • 機械メンテナンス

基本的な使用は金属同士の接合です。ただ金属同士といっても、その用途は詳しく見ると非常に幅広いものとなっています。

例えば産業用途。製造業や造船業、配管工事ではあらゆる部品の組み立て、接合が行われているでしょう。

農業分野でも、トラクターやプラウの修理・補強で使われることが多いです。

意外とアートやクラフト分野でも溶接棒が使われています。金属板にアーク溶接を施し、まるで絵を描くように仕上げるのをご存知でしょうか。

ハンドクラフトでも、金属を扱うものはアーク溶接が使われています。今では数が減ったものの、カスタムカーやバイクでも使われることが多いです。

機械メンテナンスとして、工場設備の修理や建設機械のメンテナンスで溶接棒が使われることも。

総じて溶接棒は幅広い用途で使われるため、単純に「金属同士の接合」だけにとらわれないのが特徴です。

溶接棒を選ぶポイント

溶接棒はいくつか種類があり、用途や状況に応じて選ばなくてはなりません。ここで注意したいポイントは2つです。

  • 母材と溶接棒の素材を合わせる
  • 電流量と厚さに合わせた太さの溶接棒を選ぶ

上記2点について、詳しく解説していきます。

母材と溶接棒の素材を合わせる

溶接作業でもっとも重要なポイントの一つは、「母材と溶接棒を合わせる」ことです。

母材は溶接をする軟鋼やステンレス鋼といった素材で、素材に適した溶接棒が販売されています。

対象の母材と同じ、もしくは適した材質の溶接棒を使用すると、溶接部の強度と品質を確保。ひいては作業効率向上につながります。

具体的には下記3つの溶接棒について紹介しましょう。

  • 軟鋼用溶接棒
  • ステンレス用溶接棒
  • 鋳物用溶接棒

軟鋼は広く使用されている金属で、溶接がしやすい代表例です。一般的に溶接しやすく、溶接痕が滑らかになる特性があります。

また薄板から厚板まで幅広く対応可能。多くの場面、工場や現場で使われています。

ステンレス鋼は耐食性が高く、特定の用途でよく使われる素材です。適したステンレス用溶接棒を使えば、ステンレス独自の耐腐食性を維持できます。

鋳鉄の補修や溶接にも、専用の鋳物用溶接棒が必要と言えるでしょう。

このタイプの溶接棒は特定の温度で溶接しやすい特性を持ち、鋳鉄の特性に適合するように設計されているのが特徴です。

購入時はパッケージに「◯◯用溶接棒」といった名称で販売されているため、できる限り母材に適した溶接棒を購入してください。

電流量と厚さに合わせた太さの溶接棒を選ぶ

溶接作業を成功させるためには、適切な太さの溶接棒を選ばなくてはなりません。母材の厚さと、使用する溶接機の電流量に応じたものを選びましょう。

溶接棒の太さは、母材の板厚半分くらいが目安とされています。例えば6mm厚の母材に対して、3mmの溶接棒を選ぶといったイメージです。

しかしあくまで目安なので、具体的な選定には以下のポイントを考慮してください。

  • 薄い母材:細い溶接棒
  • 厚い母材:太い溶接棒

上記ポイントはあまり難しいものではなく、イメージしやすいでしょう。厚い母材に細い溶接棒を使うと、溶け込みが足りない&すぐ溶接棒がなくなります。

反対に薄い素材に太い溶接棒を使うと、やや溶け込みが多く失敗しやすいです。太い溶接棒なら電流量も流せるので、強固な溶接も行えます。

次に電流量を見ていきましょう。まずは低電流の溶接機を使う場合です。

低電流の溶接機では、細い溶接棒を使用してください。例えば家庭用の100V電源を使用する場合、1.6mmや2.0mmの溶接棒が適しています。

高電流の溶接機は太い溶接棒が適切です。工業用の高出力溶接機だと、3.2mmや4.0mmの溶接棒を使用します。

厚みと細さ、電流量の関係をイメージしながら溶接棒を選定しなくてはなりません。

最初は母材の厚みを覚えておき、適切な溶接棒の太さと電流量を調整するのが良いでしょう。

溶接棒の種類

溶接棒はいくつか種類があり、母材に適した溶接棒が数多く販売されています。

ここでは代表的な4種類の溶接棒について解説しますので、どの溶接棒を購入するか迷われている際は参考にしてください。

軟鋼用低電圧溶接棒

軟鋼用低電圧溶接棒は、おもに低電圧の溶接機で使用される溶接棒です。とくに家庭用やDIYの用途で人気があり、初心者にも扱いやすい特徴があります。

低電圧の溶接機は家庭用の100V電源で動作できるため、専門的な知識・設備がなくても手軽に溶接が行えるでしょう。

用途としては下記の2点です。

  • 薄い鉄板の溶接
  • 家庭用溶接機での使用

軟鋼用低電圧溶接棒は、おもに薄い鉄板の溶接で使われています。例えばDIYや家具製作、小物、かんたんな修理作業に最適です。

また家庭用の定電圧溶接機で使用されるため、家庭での使用やガレージでなにか作業したい場合はこの溶接棒を選ぶと良いでしょう。

一般軟鋼用溶接棒

一般軟鋼用溶接棒は、幅広い用途に対応できる汎用性の高い溶接棒です。鉄の薄板から厚板まで、さまざまな母材に対して使用できます。

軟鋼は炭素含有量が低く、溶接しやすい特性を持つ金属と言えるでしょう。建築や製造業、DIYといった多くの分野で使用されています。

用途としては幅広い板厚に対応しているため、家庭用から工業用まで幅広いです。

低電圧の溶接で足りないと感じ始めたら、一般軟鋼用を使用するのが良いかもしれません。

一般軟鋼用溶接棒は中級者から上級者向けにも対応しており、非常に扱いやすいのが特徴です。

ステンレス用溶接棒

ステンレス用溶接棒は、ステンレス鋼の溶接に特化した溶接棒です。適した溶接棒を使えばステンレス鋼の特性を活かしつつ、高品質な溶接を実現できるでしょう。

ただステンレスは熱伝導率が低く、溶接時に熱が集中しやすくなります。軟鋼と異なり、溶接に技術が必要です。

そしてステンレス用溶接棒とありますが、実は異種金属の溶接にも使用できます。

  • ステンレス同士の溶接
  • 異種金属の溶接

基本的にはステンレス鋼同士を溶接する際に使われます。食品機器や医療機器といった、高い耐食性が求められる分野での使用が多いです。

ほかにもステンレス鋼とほかの金属(例えば軟鋼やアルミニウム)を接合する場合にも使用されます。

ステンレス鋼とほかの金属を溶接する場合、適切な溶接棒を選べば異なる金属間でも強固な接合が可能です。

鋳物用溶接棒

鋳物用溶接棒は鉄を使った鋳物(鋳鉄)の補修、接合に特化した溶接棒です。

実は鋳物、一般的な鉄とは異なる特性を持っています。高炭素含有により硬くて脆い特性を持つため、一般的な鉄とは異なるアプローチが必要です。

一般的な鉄(炭素鋼)の場合は炭素含有量が低く、柔軟で加工しやすい特性と言えるでしょう。

用途としては鋳物専用となっており、鋳鉄の補修や溶接に適しています。とくに鋳鉄は脆く、ひび割れをしやすい素材です。

補修や修理用途として、よく鋳物用溶接棒が使われています。

被覆剤とは?被覆材の種類の違いについて

溶接棒には中心の金属心線だけではなく、被覆材の存在も非常に重要なものとなっています。

そして被覆材にはいくつか種類があり、それぞれ特性も異なるのです。本項目では4つの被覆材についてご紹介しましょう。

イルミナイト系

イルミナイト系の溶接棒は、その被覆材にイルミナイト(チタンと鉄の酸化鉱物)が約30%含まれています。

その特徴はアークが強く安定している点。操作がしやすく、安定した溶接を行えます。溶接初心者でも扱いやすく、スムーズな作業が魅力的な被覆材です。

溶け込みも良好で、溶接部が強固。初心者じゃなくても、仕上がりを良くしたいならイルミナイト系を選ぶと良いでしょう。

またイルミナイト系の溶接棒は、日本で独自に開発されたものです。高い技術力と品質が保証されています。

そのため国内外で広く使用されるだけではなく、試験やコンクールでもよく使用される被覆材です。

ライムチタニヤ系

ライムチタニヤ系の溶接棒は、その被覆材に高酸化チタン(約30%)とライム(炭酸石灰)といった塩基性の物質(約20%)を配合している点が特徴です。

この成分により、アークが穏やかで安定化に寄与。均一で高品質な溶接が可能です。

スラグの流動性が良く、溶接後のビードが美しく仕上がります。スラグは簡単に剥がれ、手間をかけずに綺麗な仕上がりを得られるでしょう。

ほかの被覆材に比べて吸湿性が低く、通常の保管状態であれば再乾燥が不要です。取り扱いや保管が容易で、品質の維持がしやすくなっています。

ライムチタニヤ系は家庭用から工業用まで、さまざまな用途に適していると言えるでしょう。作業性の高さが評価され、幅広いユーザーに支持されています。

高酸化チタン系

高酸化チタン系の溶接棒は、その被覆材に高酸化チタンを約35%配合している点が特徴です。

溶接時に発生するスパッタ(溶融金属の飛散物)が少なく、作業環境をクリーンに保てます。仕上がりも美しくなり、後処理の手間がありません。

アークも安定していて、溶接作業がスムーズに行えるでしょう。均一で高品質な溶接もしやすい被覆材です。

とくに溶接ビードがなめらかな特徴があり、外観が重視される外装の溶接に適しています。

高酸化チタン系は上記の特性により、とくに仕上がりの美しさが求められる溶接作業で選ぶのがおすすめです。

薄板の溶接や見た目を重視する溶接作業なら、高酸化チタン系の溶接棒が非常に適しています。

低水素系

低水素系の溶接棒は、被覆材に炭酸カルシウムやフッ化カルシウムが多く配合されています。

名称に「低水素」とあるように、溶接金属中の水素量を最小限に抑制。水素による割れ(ハイドロジェンクラック)のリスクが大幅に減少します。

溶接中の酸素量も少ない状態で作業できるため、溶接金属の酸化が抑えられ、溶接不良が起こりにくいです。

特性から溶接強度が高く、低水素系を使用すれば溶接金属の強度と靭性が向上します。厳しい使用条件下でも高い性能を発揮できるでしょう。

ただし低水素系の溶接棒は吸湿しやすく、使用前に300~400℃で30~60分間の再乾燥をしなくてはなりません。保管時も100~150℃の環境が推奨されます。

また低水素系の溶接棒はアークが比較的不安定で、継ぎ目部分でブローホール(気泡)が発生しやすいです。

作業時はとくに注意しなくてはなりません。初心者は練習を重ね、安定した操作を習得する必要があります。

低水素系の溶接棒は上記の特徴から、橋梁や建築構造物、圧力容器といった、とくに高い強度と信頼性が求められる溶接作業に最適です。

まとめ

今回は、溶接棒の種類や選び方について解説していきました。

この他にも、DIYにまつわる知識や電動工具の知っておきたい知識はまだまだあります。

ぜひ、その他の関連記事も読んで参考にされてみてください。