グリースの種類や潤滑油との違い、おすすめメーカーの特徴について解説します
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グリースと潤滑油は、どちらも潤滑剤(じゅんかつ)の一種です。しかし、グリースと潤滑油では、特徴や性質が違うため、使用方法や向いている用途が異なります。
この記事では、「グリースの種類や潤滑油との違い、おすすめメーカーの特徴」などについて解説していきます。
グリースをはじめとする潤滑剤は種類がとても多いため、どれを使えば良いか迷ってしまう方に向けて、グリースと潤滑油の特徴や両者の相違点を中心にお伝えします。
ぜひ、参考にされてみてください。
グリースとは
グリースには液状油の粘度を高める作用がある、増稠剤(ぞうちょうざい)という成分が含まれています。
増稠剤の作用により常温では半固体や半流動体となっており、部品への吸着力が強いです。滴下や飛散が少ないので、低速で動きつつ荷重がかかるパーツの潤滑に適しています。
またグリースに含まれている増稠剤は、金属との親和性が良いです。そのため金属部材の回転部や駆動系で多く使われています。
グリースが活用するパーツの例を下記にまとめました。
- 軸受
- ベアリング(転がり軸受)
- ピストンリング
- 低速のギヤ
上記箇所はよくグリースが使われています。
潤滑油とは
潤滑油は基油(ベースとなるオイル)に添加物を加えた、液状の潤滑剤です。
液状なので部材へ浸透しやすく、高速で動くパーツの潤滑に適しています。浸透性が高いため、大量に塗布しても効果は変わりません。
基本的にはスプレー式を使うか、刷毛で薄く延ばして塗布します。潤滑油が活用するパーツの例は、以下の通りです。
- チェーン
- スプロケット
- 高速のギヤ
潤滑油はパーツの摩擦や摩耗を防止するだけではなく、パーツを冷やす効果もあります。部品同士の隙間を埋める密封作用もあり、サビの防止にも効果的です。
グリースと潤滑油の違いについて
グリースと潤滑油の大きな違いは、増稠剤の有無です。添加物はどちらにも含まれていますが、粘度を高める増稠剤はグリースにしか含まれていません。
そのため潤滑油は液状で、グリースは半固体状です。
ただしグリースの硬さは、含まれている増稠剤の量で変わります。増稠剤の量が多いほど硬く、少ないほど柔らかいです。
グリースの硬さはグレード番号や、稠度(ちょうど)の値で確認できます。稠度(ちょうど)の数値が大きく、グレード番号の数字が小さいほど柔らかいグリースです。
グリースと潤滑油の種類と特徴について
グリースと潤滑油の種類は非常に多いです。ここでは代表的なグリース4種と、潤滑油11種をご紹介します。
特徴も合わせてお伝えするので、ぜひ潤滑剤選びの参考にしてください。
リチウムグリース
リチウムグリースは増稠剤にステアリン酸リチウム、またはひまし油の硬化脂肪酸リチウム石鹸を使っています。
潤滑性やせん断安定性、耐水性や耐熱性に優れており、もっとも欠点が少ないグリースです。適用範囲が広いので産業機械や自動車の部品だけではなく、家電製品のパーツにも使用できます。
汎用性が非常に高いので、リチウムグリースをベースにした派生の商品も多いです。さまざまなパーツに使用できますが、樹脂やゴムへの使用には向いていません。
モリブデングリース
モリブデングリースは添加剤に有機モリブデン、または二硫化モリブデンを使っています。
添加剤にモリブデンが使われているだけで、ベースになっているのはリチウムグリースです。極圧性(摩擦面の焼付きや融着による損傷を防止する性能)が高く、耐摩擦性や耐摩耗性に優れています。
そのため焼付きが発生しやすい部品や、強い負荷がかかるパーツの潤滑に最適です。
ただし、モリブデングリースは耐水性や耐熱性の低い商品が多いので、使用環境に合っているか確認が必要となります。
シャーシグリース
シャーシグリースは、自動車のシャーシ(駆動や車輪周囲の機構)に使うグリースです。ただしゴム製のパーツには向いていないので、ブレーキ周辺の潤滑には使えません。
増稠剤にはカルシウム石鹸、もしくはアルミニウム石鹸を使っています。耐水性や潤滑性に優れており、汎用性も高くて比較的リーズナブルな価格です。
しかし、リチウムグリースよりも性能は低く、耐熱性も高くありません。極圧タイプのシャーシグリースなら、油膜の保持時間や耐摩擦性を補えます。
シリコングリース
シリコングリースは、基油がシリコン系の合成オイルです。化学的な安定性が高く、酸化しにくい上に硬さも安定しています。さらに、耐熱性と耐寒性も優れているため、熱で変色しづらく低温でも硬くなりにくいです。
ちなみに、高温タイプのシリコングリースには200℃以上の高温で使える商品もあります。また、シリコングリースは樹脂やゴムへ使用しても悪影響を与えづらく、ゴム製のパーツは潤滑性が高いです。
しかし、鋼製のパーツに使った場合は潤滑性が低いので、使用する部品の材質には注意してください。
マシン油
マシン油はもっとも一般的な潤滑油です。商品の種類が非常に豊富で、季節に合わせて稠度の違うマシン油を使い分けます。
幅広い用途で使われていますが、機械の軸受や回転で摩耗するパーツに使われるケースが多いです。
添加剤を含まないため、グリースや金属加工油のベースとしても使われています。基油には石油系の精製鉱油を使うのが一般的です。
しかし、異なる基油を使っている商品もあるので、購入する際は必ず基油の種類を確認してください。基油が違うとマシン油の品質も異なります。
タービン油
タービン油は火力や水力、蒸気や原子力の発電用タービンに使う潤滑油です。主に高速で回転する機器や、各種タービンの軸受に用いられています。
軸受以外だと圧縮機や減速機の潤滑油、低圧の油圧機械に使う作動油としても活躍中です。
タービン油は、以下の2種類に分けられます。
- 無添加タイプ(粘度指数が高く、添加剤を含んでいない)
- 添加タイプ(防錆剤や消泡剤、酸化防止剤を含んでいる)
どちらの種類も、水との分離性に優れており乳化しにくいです。
スピンドル油
スピンドル油は高速で動く機械に使う潤滑油です。主に小型モータやミシンの軸受、小型で軽重な歯車の潤滑に用いられています。
粘度や荷重が低く、添加剤を含まないのがスピンドル油の特徴です。不純物を含まないため、グリースや絶縁油のベースとしても使われています。
以前は精紡機の主軸(スピンドル)に使われていたので、スピンドル油と呼ばれていました。現在では日本の工業規格によりマシン油と統合され、あまりスピンドル油とは呼ばれなくなっています。
シリンダー油
シリンダー油は第4類危険物の、第4石油類に該当します。以前は蒸気機関のシリンダーや弁に広く用いられていました。
現在は大型船舶のディーゼルエンジンで、シリンダー部の潤滑油として使われています。シリンダー油の特徴は、以下の通りです。
- 水に溶けない
- 引火点が高い
- 高粘度
シリンダー油は非常にタフな性質なので、高圧の状態でも潤滑油として使えます。高温になる場所や、大きな荷重がかかるパーツへの使用も可能です。
※シリンダー油は現在、マシン油と統合されています。
軸受油
軸受油は機械の軸受部分に使う潤滑油です。主に循環式や油浴式、飛沫式といった反復タイプ(回収タイプ)の潤滑方法で使用されます。
循環式は潤滑に使った油をろ過して、何度も使い回す仕組みです。油浴式は軸受を油に浸して潤滑します。飛沫式は油溜まりのオイルを掻き上げて、軸受部分に振りかける潤滑方法です。
軸受油は従来、無添加の精製鉱油が用いられていました。
しかし、現在では酸化やザビを防ぐ添加剤の入った商品が主流となっています。
冷凍機油
冷凍機油は冷凍機用コンプレッサーの潤滑や、温度調節に用いられる特殊な潤滑油です。主に電気冷蔵庫や大型冷凍機のコンプレッサーで使われています。
密閉された冷凍機の内部を循環しているので、頻繁にオイルを交換できません。そのため冷凍機油は温度や時間で劣化しづらく、粘度が低くて潤滑性に優れています。
冷凍機油を大きく分けると、以下の2種類です。
- 合成油タイプ
- 鉱油タイプ(ナフテン系)
合成油タイプはさらにエステル系やエーテル系と、合成炭化水素系に分けられます。
油圧作動油
油圧作動油は油圧ポンプが生み出すエネルギーを、油圧機械へ伝達するために使う油です。
エネルギーの伝達だけではなく、装置の潤滑や冷却も行います。温度による粘度の変化が少ない上、長時間使っても酸化しにくいです。
また防錆性や消泡性、水との分離性にも優れています。油圧作動油の大まかな種類は、以下の通りです。
- 鉱物タイプ(精製した石油が基油)
- 合成タイプ(基油が合成油)
- 水溶タイプ(主成分に水を含む)
- 生分解タイプ(土壌で分解される)
- 高含水タイプ(水が90~95%)
ギヤ油
ギヤ油は機械の歯車に使う潤滑油です。荷重が大きくても使えるため、自動車や産業用の機械にも用いられています。
ギヤ油は無添加タイプと添加タイプの2種類です。無添加タイプは酸化の安定性があり防錆性や消泡性、水との分離性に優れています。
添加タイプに含まれる添加物の一例を、下記にまとめました。
- 極圧剤
- 流動点降下剤
- 摩擦調整剤
- 酸化防止剤
- 防錆剤
- 消泡剤
極圧剤は、金属の表面に強力な潤滑膜を形成する有機化合物です。金属の接触による摩擦や磨耗を軽減させて、焼付きを防ぎます。
圧縮機油
圧縮機油は主に、圧縮機のシリンダーに使う潤滑油です。カーボンの生成量が非常に少なく、酸化の安定性や防錆性に優れています。
圧縮機油を大まかに分けると、往復動形とスクリュー形用の2種類です。スクリュー形用は使用条件が苛酷なため、消泡性と水分離性も追加されています。
両者は成分が異なるので、混油しないように注意してください。
また圧縮機の中には、タービン油に適した機械もあります。そのため機械の種類や運転条件に合わせて、最適な潤滑油を選びましょう。
摺動面油(しゅうどうめん)
摺動面油は工作機械のすべり案内面に使います。
ちなみに、読み方は「摺動面(しゅうどうめん)」と呼び、言葉の意味としては、下記のとおりです。
摺動面とは
機械の装置などをすべらせながら動かすことです。正しくは(しょうどう)と呼びます。
その面の事を摺動面(しゅうどうめん)といいます。
そして、工作機械の案内とは加工物を動かす機構のことで、すべり案内は固定されているベッドの上をテーブルがスライドする仕組みです。
すべり案内のベッドとテーブルが接触している面をすべり案内面と呼び、摺動面油は接触面に薄い油膜を作り、テーブルをスムーズに動かす役割として利用されます。
酸化の安定性や防錆性、接触面で発生する振動現象への耐性に優れています。基油が石油系の精製鉱物で、無添加の商品が多いです。
種類としては、すべり案内面専用タイプと油圧作動油と兼用で使えるタイプがあります。
グリースと潤滑油のメーカーの特徴と違いについて
グリースや潤滑油は、さまざまなメーカーが販売しています。メーカーによって商品の特徴が異なるため、特徴を把握しておくと商品選びが容易になるでしょう。
ここではグリースや潤滑油を販売しているメーカーから、おすすめのメーカーをご紹介します。
プロスタッフ(Prostaff)
プロスタッフは、カー用品を取り扱っている国内のメーカーです。販売している潤滑剤はスプレー式のみで、4種類のタイプに分けられます。
- フッ素樹脂を配合した防錆性もあるスプレー(サビを取り除いて、サビの発生を防ぐ)
- 二硫化モリブデンを配合したグリーススプレー(荷重がかかるパーツに最適)
- グリーススプレー
- シリコンマルチスプレー(樹脂やゴムにも使える)
商品名にWSが付いているのは、プロスタッフが展開しているワークスブランドの商品です。
スリーエム(3M)
スリーエムは電気や電子業界向けの機器を販売しているアメリカのメーカーで、電気関連だけではなく自動車部品や事務用品、医療用製品も販売しています。
スリーエムが販売している潤滑剤は、以下の3商品です。
- ペースト状のシリコングリース(樹脂やゴムにも使える)
- 防錆効果のある潤滑スプレー
- 銅粒子を配合したペースト状のグリース(使用できる温度の範囲が広く、焼付きや鳴きの防止に最適)
Holts(ホルツ)
ホルツは自動車関連の商品を取り扱う、イギリス発祥のブランドです。現在はロイズ社や武蔵貿易株式会社と合併しているため、企業名は武蔵ホルト株式会社になっています。
ホルツが販売している潤滑剤は、すべてスプレー式です。
- 強力に浸透するトップオイル
- 高粘着のトップグリース
- 樹脂やゴムにも使えるマルチスプレー
- ゴムに適応したベルトスプレー(ベルトの鳴きやべたつき防止)
- リチウム系のスプレーグリース
AZ(エーゼット)
エーゼットは自動車やバイクの整備に使う、オイルやワックスを販売している日本のメーカーです。販売している潤滑剤が非常に多いため、下記に潤滑剤の種類をまとめました。
- 高浸透で防錆効果がある潤滑剤
- チェーンソーオイル
- 油圧作動油
- 長期の防錆に適した潤滑剤
- カギ穴用のコンパクトな潤滑スプレー
- エンジンオイル
- チェーンオイル
上記以外にも引出しや敷居用の潤滑剤、刃物用のサビ止めオイルも取り扱っています。
KURE(呉工業)
KUREは家庭用から業務用まで、多種多様な潤滑剤を取り扱う日本のメーカーです。販売している潤滑剤の一部を、下記にまとめました。
- 5-56シリーズ(知名度と人気が高い)
- 電気装置用の2-26、工業用の防錆3-36
- 船舶用の6-66
- チェーンオイル(自転車専用タイプもある)
- シリコン系の潤滑油やグリース
- グリース(モリブデン配合の業務用もあり)
KUREの潤滑剤はほとんどスプレー式ですが、グリースはペースト状もあります。
ワコーズ(Wako’s)
ワコーズは自動車関連の商品を取り扱う、日本のブランドです。潤滑剤は自動車用やバイク用の商品をたくさん取り揃えています。
- スプレー式の潤滑油(シリコン系やモリブデン配合タイプもある)
- グリーススプレー
- チェーン用スプレー(グリースタイプと、防錆効果がある潤滑油タイプ)
- ブレーキ用のグリースやオイル(グリースはシリコン系もあり)
- グリース(建設機械用やベアリング用、モリブデン配合タイプもある)
- エンジンオイル、フォークオイル
- ギヤ油
ピットワーク(Pitwork)
ピットワークは日産自動車が設立した、自動車関連の商品を取り扱うブランドです。販売している商品は、日産車だけではなく幅広い車種に対応しています。
- 防錆効果がある潤滑スプレー
- モリブデン配合タイプの防錆スプレー
- シリコン系の潤滑スプレー
- グリーススプレー(ドラムブレーキ用や、シリコン系もある)
- 等速ジョイント用の潤滑油やグリース
- エンジンオイルやブレーキオイル
上記以外にもエアコン用やベルト用の潤滑剤、タイヤ交換用の固形グリースも販売しています。
アストロプロダクツ
アストロプロダクツは整備用の工具を専門で取り扱う日本の工具メーカーで、自社の商品だけではなく他社商品も取り扱っています。
潤滑剤も他社商品を取り扱っているため、ラインナップの幅が広いです。アストロプロダクツが取り扱っている潤滑剤の一部を、下記にまとめました。
- エア工具用の潤滑油
- キズやサビを防止する自動車用の潤滑スプレー
- タイヤ交換時にビード部へ塗る潤滑クリーム
- リチウムグリース
- モリブデングリース
- シャーシグリース
まとめ
今回は、グリースの種類や潤滑油との違い、おすすめメーカーの特徴などを中心に解説してきました。
DIYには、潤滑剤に関する知識だけではなく、電動工具をはじめとした様々な知識が必要です。
難しい専門知識を初心者でも分かりやすく解説しているコラム記事は、まだまだたくさんありますので、ぜひ、その他の関連記事も読んで参考にされてみて下さい。
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