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被覆アーク溶接って?メリットデメリットからおすすめ機種まで解説

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被覆アーク溶接は、金属棒を電極として使用する溶接です。

金属棒の先端を溶かしながら、被覆材から出るガスやスラグによって、作業対象の金属を溶接します。

被覆アーク溶接は溶接機の中でも比較的、安価な装置です。導入のしやすさも相まって手作業で行われることが多く、「手溶接(ハンド溶接)」とも呼ばれています。

とくに被覆アーク溶接は、溶接に必要な熱源を「金属棒の先端で発生するアーク」でまかなう方法です。

※アークは高温で発光するプラズマの一種で、金属棒と作業対象の金属を接近させると発生します。

このアークが発生すると、金属棒の被覆材から出るガスやスラグが溶融金属を保護。風や外部から受ける要因の影響は受けにくくなっています。

さらに被覆材がアークの安定性を向上させる効果もあるので、比較的メリットの多い溶接方法と言えるでしょう。

自動化された溶接方法が普及している現代では、被覆アーク溶接が使われる場面はやや減ってきています。

室内外を問わずに利用できる手軽さと、安価な装置を使える利点がポイントです。とくに小規模な工場や現場で使用されることが多いです。

ということで今回は被覆アーク溶接って?という基礎的な知識から、メリットやデメリット、おすすめ機種などを中心に解説していきます。

被覆アーク溶接のメリット・デメリット

実際に被覆アーク溶接を利用しようと思った際、それぞれメリットとデメリットを知っておくと分かりやすいです。

ここでは被覆アーク溶接のメリットとデメリットについて、詳しくまとめました。

被覆アーク溶接のメリット

被覆アーク溶接の主なメリットは、以下の3つです。

  • 室内外どちらでも作業ができる
  • 比較的安価で簡単にメンテナンスできる
  • どんな材料や構造でも溶接可能

被覆アーク溶接は、風の影響を受けにくい利点があります。そのため室内外どちらでも作業が可能です。

一方TIG溶接や半自動溶接は風の影響を受けやすく、屋外よりも屋内の作業が向いているでしょう。

フィールドでの修理や建設現場での作業なら、被覆アーク溶接が適しています。

そして被覆アーク溶接機自体は安価であり、ホームセンターでも手軽に入手できるのが利点。シンプルな構造のため、メンテナンスや点検も容易です。

日々の運用がラクになる点も踏まえると、必要な作業に時間を割けるメリットがあります。

被覆アーク溶接は手作業が前提となっているため、どんな材料や構造でも溶接が可能です。

対して自動溶接やロボット溶接は、専用の設備が必要な点から柔軟性に欠けます。

以上のように、被覆アーク溶接は室内外どちらでも作業が可能です。

さらに比較的安価でメンテナンスしやすく、どんな材料や構造でも溶接が可能なのは見逃せません。

被覆アーク溶接のデメリット

被覆アーク溶接には、以下のようなデメリットがあります。

  • 溶接速度が遅い
  • スラグ処理が必要
  • 多量の煙が発生する
  • 作業の熟練度によって仕上がりが異なる

被覆アーク溶接は、電極に流す電流を制限しなくてはなりません。ほかの溶接方法に比べ、溶接速度が遅くなるのは避けられないでしょう。

そのため大量の溶接作業を行う場合には、作業時間がかかってしまいます。

そして被覆アーク溶接は電極が溶けた際に形成される、スラグと呼ばれる不純物が出る溶接方法です。

スラグの処理は必須なので、その分の作業時間や手間がかかるでしょう。もしスラグを処理しないと、溶接部の品質が低下する場合があります。

ほかにも被覆アーク溶接では、電極が溶けた際に多量の煙が発生するのは避けられません。

換気が十分に取れない場所で行うと、健康被害のリスクが高まります。

とくに鉛やカドミウムといった、有害物質を含む電極を使用する場合には注意が必要です。十分な換気を行いましょう。

また被覆アーク溶接は、溶接棒の長さが作業進行に合わせて短くなっていきます。短さに合わせ、手の動きや溶接具合を判断しなくてはなりません。

一朝一夕で身につくものではなく、感覚として熟練した技術が必要です。

また溶接作業によっては、棒を低く保持する必要があります。その高さを調整するといった、手作業ならではの技術的な遊び部分が大きいです。

技能レベルが異なる場合、溶接部の仕上がりに差が生じるのはデメリットとなるでしょう。

被覆アーク溶接と他の溶接との違い

被覆アーク溶接のほかにも、いくつか溶接方法があります。

特徴を捉えるために、ほかの溶接とも比較してみましょう。

レーザー溶接

レーザー溶接は高エネルギーのレーザー光を用いて、金属や非金属材料を溶接する方法です。

高い精度と速度、優れた制御性、非接触性、そして熱影響が小さいという特長を持っています。

レーザー光は微細なスポットで、物質に集中して熱を加えられる技術です。非常に精密な溶接が行えます。

またレーザー溶接には、様々な種類のレーザーが使用されるのも特徴です。

一般的にはCO2レーザー、Nd:YAG(ネオジムヤグ)レーザー、ファイバーレーザーが使われます。

用途としては自動車や航空機の部品、電子機器、医療器具、宝石といった様々な分野が該当。

高い精度が求められる分野では、レーザー溶接が一般的に採用される傾向があります。

ただしレーザー溶接には、いくつかの制約もある点に注意が必要です。例えばレーザー溶接は金属材料に向いており、一部の非金属材料には適していません。

さらに発生する熱で材料が変形することもあるため、熱影響ゾーンを制御する必要があります。

レーザー溶接自体も高価なので、低コストな溶接方法を求める場合には適していないでしょう。

TIG溶接

TIG溶接はTungsten Inert Gas Weldingの略で、非常に正確で繊細な溶接方法の一つです。

この溶接方法は電極にタングステンを使用し、電極周辺に保護ガスを供給しながら行われます。

TIG溶接は高品質な溶接を必要とする産業分野で、よく使用されている溶接方法です。

例えば航空宇宙、自動車製造、自転車製造、船舶建造、食品加工機器が該当します。

高い制御性を持ち、材料の変形や歪みを最小限に抑制。また細い溶接シールドを作ることもできるため、綺麗な仕上がりが求められる場合にも適しています。

TIG溶接は非常に正確な技術を必要とするため、専門的な知識や技能を持つ溶接技術者が実行しなくてはなりません。

正しく実行される場合、TIG溶接は非常に高品質で耐久性があり、美しい仕上がりを実現できます。

プラズマ溶接

プラズマ溶接とは、電極と基材間に発生させたプラズマアークを熱源とします。そして電極から溶融した金属を基材上に流し込み、溶接を行う溶接方法です。

TIG溶接と同様に非消耗性電極タイプに分類され、電極にはタングステン棒が使用されます。

しかしプラズマ溶接の場合は、電極を取り囲むノズルとプラズマガスによってアークが広がるのを防止。

そのためTIG溶接よりも方向性が高く、フィレット溶接に適しています。またスパッタがほとんど発生しないため、高品質な溶接が可能です。

大別するとプラズマ溶接には、プラズマアーク溶接とプラズマジェット溶接の2種類があります。

プラズマアーク溶接は電極と基材間に発生する転移アークを利用し、溶接を行う方法です。

一方プラズマジェット溶接は、トーチ内のノズルと電極間に発生する非転移アークによって高温・高速の空気流を発生。その熱によって金属を溶かす方法です。

高品質な溶接が可能であり、自動化に適した溶接方法でもあります。

しかしTIG溶接よりも設備の初期投資が高く、操作にも高度な技術が必要です。

電子ビーム溶接

電子ビーム溶接とは、真空管や陰極線管で電子が放出される原理を利用した溶接方法です。

一般的に真空(高真空型)で行われ、薄板や厚板の歪みが少ない溶接やマイクロ溶接を特徴とします。

近年では完全な真空が必要ない溶接(低真空型)も可能になっており、移動式の電子銃を備えた電子ビーム溶接機(電子銃移動型)も開発。用途は拡大中です。

一般的に見られる電子ビーム溶接機のビームスポット径は約0.2mmで、電子ビームのエネルギー密度はアークによるエネルギー密度の約1000倍もあります。

つまり溶接箇所の周辺に熱が少なく伝わる上、高密度なエネルギーを照射可能。歪みの少ない高品質な溶接を実現しました。

また電子ビームの出力を制御することで、溶融深度も調整できます。

厚板から薄板まで幅広い材料に適用可能であり、溶接中に酸化する恐れのある高融点金属(タングステンなど)や活性金属(チタンなど)の溶接も可能です。

電子ビーム溶接の応用分野には、船舶の側板、橋梁、貯蔵タンク、航空宇宙部品、電子部品があります。

電子部品は真空接合が必要な、水晶振動子の封止に活用。

金属蓋とセラミックパッケージの間にブレザ材料を真空はんだ付けしてシールする、「電子ビームシール法」が用いられます。

CO2/MAG溶接

CO2溶接とMAG溶接は、両方ともアーク溶接の一種です。溶接部を外部の空気から保護するシールドガスを用いた溶接方法となっています。

名称にCO2が付く通り、シールドガスに二酸化炭素を用いた溶接方法です。MAG溶接は不活性ガスと活性ガスである、二酸化炭素を混合して使用します。

両者の最大の違いは、シールドガスの組成です。CO2溶接は二酸化炭素だけを使用するのに対し、MAG溶接は不活性ガスと二酸化炭素を混合して使用。

より柔軟なシールドガスの選択が可能です。

MAG溶接のほうが高速で効率的な溶接ができる一方で、CO2溶接の方が熱の影響が少なく、綺麗な溶接ビードを得られます。

またMAG溶接は「自動送給機能付きの溶接ワイヤ」を使用するため、作業効率が高いです。自動車産業の大量生産ラインで広く採用されています。

一方CO2溶接は二酸化炭素が比較的安価で入手できるため、日本の自動車産業でよく使われている溶接方法です。

このようにCO2溶接とMAG溶接は似たような溶接方法であり、両者ともシールドガスを用いて外部の空気から溶接部を保護します。

大きな違いはシールドガスの組成により、特徴が異なる点です。

MIG溶接

MIG溶接はアーク溶接の一種であり、インバーター電源を使用した接合技術です。

名称にあるMIGは「Metal Inert Gas」の略で、金属の溶接に使われる不活性ガスを意味します。

MIG溶接では電極として、溶接ワイヤを使用。その溶接ワイヤは自動送給装置によって、自動的に送り出されます。(溶接棒の補充が効率的)

そして送り出されたワイヤは溶接トーチの先端でアーク放電を起こし、そのアークの熱で溶接する金属を溶かして接合する方式です。

MIG溶接では、常に溶接ワイヤから溶融金属が流れ出ています。ワイヤの供給量を適切に制御しなくてはなりません。

また溶接に使われるガスの種類も、材料によって異なります。

ステンレス鋼やアルミニウムといった非鉄金属の場合、アルゴンのような不活性ガスを使用するのが一般的です。

なんといってもMIG溶接は比較的簡単に操作でき、高速で溶接できるのが大きな利点。

そのため自動車や航空機の製造、建設機械といった機械加工中心の産業で利用されています。

溶接部の美しさや強度、耐食性に優れているため、高品質の溶接を実現できるのもポイントです。

スポット溶接

スポット溶接は、抵抗溶接と呼ばれる溶接方法の1つです。水冷電極で2枚の重なった板を挟み、大きな電圧を短時間かけて圧力を加えます。

板同士の接触点周辺で発生する抵抗熱により板を溶かし、2枚の板を一点で溶接。投影溶接やシーム溶接といった、ほかの抵抗溶接方法もあります。

スポット溶接の利点として、加熱が一つの溶接点にのみ適用されるため、熱によるワークピース(基材)の歪みが他の溶接方法よりも小さいです。

欠点としては2枚の板が1点のみで溶接されるため、気密性を確保できないこと。

そして薄板には効果的な一方で、厚板を溶接するのは難易度が上がります。理由としては、完全な熱の伝達ができないからです。

アーク溶接との違いは溶接範囲が挙げられます。

圧力を基材に加えて溶接するスポット溶接に対し、アーク溶接は溶接金属を添加剤として使用し、添加剤と基材を溶かす溶接方法です。

両方ともロボットによる自動化が可能な一方で、用途が異なります。

スポット溶接は点による溶接なのでワークピース熱変形が小さく、アーク溶接よりも歪みが少ないです。

そのため大型の金属筐体で、鋼板を溶接する際に使用されます。とくに外装部分はアーク溶接よりも歪みが少ないため、頻繁に使用される方法です。

シーム溶接

シーム溶接は、2枚の板を線状に溶接する溶接方法です。通常は円形の電極を用いて溶接するため、円形の溶接線ができます。

この特徴からシーム溶接は、ラップシーム溶接とも呼ばれる溶接方法です。

非常に薄い板厚の材料でも溶接するでき、溶接作業も比較的簡単に行える特徴を持っています。

電気抵抗の発熱を利用して溶接を行うことから、スポット溶接と同じく抵抗溶接に分類。

高い気密性が得られるため、センサー類の電子部品を入れたケースを作成する際によく用いられます。

※パッケージ内の部品を外気から遮断することで、長期間安定して作動させることを目的とするため。

またシーム溶接は、作業者の熟練度を必要とせず、前加工の精度を必要としません。

作業者への安全性も高いため、工場で多く採用されています。

被覆アーク溶接棒の選び方

溶接は金属をつなぎ合わせる技術であり、様々な分野で広く使われています。

その中でも溶接棒は、溶接において欠かせない材料です。しかし溶接棒には種類があり、その選択は溶接作業に大きな影響を与えます。

この項目では溶接棒の種類と、その特徴についてまとめました。

JIS Z3211規定の溶接棒の種類と用途

具体的にはJIS Z3211という規定に則って、溶接棒は作られています。それぞれ9種類ほどありますので、ぜひ参考にしてください。

イルミナイト系

イルミナイト系は、フラックス(被覆材)に含まれる鉱物の一種であるイルミナイトを約30%含んだ溶接棒です。

強いアーク特性と優れた集中性、安定性を持ち、さまざまな位置で安定した溶接を得られます。

そのためスキルテストやコンペティションで使用されることが多いです。

コベルコスチールのB-10、B-14、B-17や、日本製鉄・住友金属のG-200、G-300、A-200がイルミナイト系の代表的な溶接棒となっています。

ライムチタニヤ系

「ライムチタニヤ系」とは、酸化チタン、石灰(ライム)、ドロマイトを主原料として被覆された溶接棒のことです。

名前の由来は原料のライム(石灰)とチタンから来ています。この溶接棒の特長は下記の通りです。

  • 再アーク性が優れている
  • 低ヒュームで体に優しい
  • 棒曲げ性能に優れている
  • スパッタ発生量が少ないこと

代表的な銘柄には、神戸製鋼の「Z-44」、日鉄住金の「NS-03Hi」、ニッコー溶材の「LC-3」「LC-08」があります。

また難吸湿タイプなので、通常の保管状態では乾燥を省略可能。DIY作業にもおすすめです。

高セルローズ系

高セルローズ系とは、溶接棒の被覆材料にセルローズを20〜30wt%以上含む被覆系統のことを指します。

このタイプの溶接棒は強力なアークを持ち、電流が高すぎる場合は多くのスプラッタを引き起こすのが特徴です。

セルローズの分解によるアークシールドは、典型的なガスシールドタイプとなっています。

そして高セルローズ系は「高」と付くように、被覆材料に多くのセルローズを含みます。

セルローズはアーク熱によって燃やされ、二酸化炭素と水蒸気のガスが生成。シールドガスの役割を果たします。

このシステムは日本だと稀ですが、アメリカでは長い間広く使用されてきました。

とくにパイプ周方向の一次バックウェーブ溶接において、優れた性能を発揮します。

代表的な銘柄は、FAMILIARCTM KOBE-6010です。

高酸化チタン系

高酸化チタン系溶接棒は、フラックス(被覆材)中にチタン酸化物が多く含まれているものです。

その酸化物が溶融した際に、酸素を放出。溶融池を酸素から保護する、ガスシールド効果がある溶接棒のことを指します。

このタイプの溶接棒はスプラッタの発生が少なく、スラグも取りやすいため、美しいビード(溶接継ぎ目)を形成可能です。

また浅い侵入深度を持ち、薄板の溶接やルーツ溶接にも適しています。一方で深い侵入深度を持つ溶接には不向きです。

高酸化チタン系溶接棒の代表的な商品には、コベルコスチールのB-33やRB-26、日本製鉄住金のS-13Zがあります。

低水素系

「低水素系」とは、炭酸カルシウムやフッ化カルシウムを主成分とする溶接棒のことを指します。

この溶接棒を用いれば溶着金属中の水素量を低くでき、酸素量も少なくなるため、溶接作業性や機械的性質が優れるでしょう。

ただし湿気に弱いため、保管時には風通しの良い場所で保管しなくてはなりません。使用前も、十分に乾燥させる必要があります。

また高電流で深い溶け込みが得られるため、厚板の溶接に最適です。

一方でスタート時のアークが不安定なため、ビード始点やビード継部にブローホールが生じる可能性もあります。

神戸製鋼(LBシリーズ)や日鉄住金のS-16、ニッコー溶材のLS-16が代表的な銘柄です。

鉄粉酸化チタン系

鉄粉酸化チタン系は酸化チタン系溶接棒に鉄粉を添加したもので、JIS規格ではD4324に分類されます。

この系統は中厚板の垂直下向き溶接や水平フィレット溶接といった、下向き溶接や水平溶接に使用。

主要な成分は酸化鉄と鉄粉で構成されています。

適切な溶接棒径を使用すると良好なビード形状で、最大約8mmの水平フィレット溶接が一回で行えるでしょう。

重力溶接機と組み合わせて使用されることが多く、バット溶接にはあまり使用されません。

ビードは輝かしく美しい見た目を持ちますが、溶接金属の靭性と耐クラック性はやや劣り、厚板の溶接には適していません。

鉄粉低水素系

鉄粉低水素系は被覆剤に鉄粉を20〜30%程度含有しており、低水素系と似た被覆剤成分を持っています。

鉄粉を含むことで、同じ直径の被覆アーク溶接棒で単位長さあたりに得られる溶着量が増加。溶接能率が向上します。

また被覆剤に厚被覆があるため、下向きや水平すみ肉溶接に最適です。グラビティ溶接にも使用可能。

代表的な鉄粉低水素系の銘柄には、FAMILIARCTM LB-52-18やFAMILIARCTM LT-B52Aがあります。

鉄粉酸化鉄系

鉄粉酸化鉄系は、鉄粉および酸化鉄を主成分とする被覆剤からなる溶接棒です。

この溶接棒は水平すみ肉溶接用に使用され、中厚板の溶接に適しています。

適切な溶接棒径を使用すれば、脚長約8mmまでの水平すみ肉溶接を「良好なビード形状で1回施工が可能」です。

グラビティ溶接機と組み合わせて使用されることもあります。しかしこの溶接棒は、突合せ溶接用としてはほとんど使用されません。

特殊系

特殊系とは一般的な被覆系に分類されない、新規に開発された被覆系や特殊用途に使用される溶接棒を指します。

特定の溶接作業に適した特殊な被覆剤を使用することで、優れた溶着性や溶接品質を実現。

また特殊系は、高強度鋼や合金鋼の特殊材料溶接にも最適です。自動車、造船、鉄道、航空宇宙、エネルギー産業で使用されています。

特殊系の代表的な溶接棒は低温用溶接棒や、耐摩耗性の高い溶接棒が該当。

被覆アーク溶接のオススメ機種13選

被覆アーク溶接を具体的に検討している際、どの機種を選んだらいいか悩まれることもあるでしょう。

そこでこの項目では、具体的なオススメ機種についてまとめました。

まずは家庭用コンセントでも使える、導入しやすい機種について4機種ご紹介します。

スズキッド ホームアークナビプラス

「スズキッド ホームアークナビプラス」という製品は、家庭用に開発された交流アーク溶接機の一つです。以下のような特徴があります。

  • コンパクトで持ち運びに便利
  • 家庭用コンセントで使用可能
  • 静かな動作音
  • 安価

幅は120mmで奥行きと高さが220mmと、小型で質量も軽いため持ち運びに便利です。

定格一次電圧が100Vで、定格一次入力が1.5kVA(100V/1500W)。家庭用コンセント100V/15Aで使用できます。

動作音も小型電気ヒーターのような小さな音です。騒音を気にすることなく使用できるのも嬉しいポイント。

比較的安価な価格帯に属し、初めて溶接をする人にも手軽に試してもらえるでしょう。

家庭用コンセントで使用可能な点と、専用の電源設備がなくても手軽に溶接ができる点は非常におすすめです。

非常にコンパクトで持ち運びにも便利なため、DIYや趣味での使用に適しています。

育良精機 アークファン IS-H40BF

「育良精機 アークファン IS-H40BF」の特徴は、100V電源で使用可能な冷却ファン付交流アーク溶接機という点です。使用可能な溶接棒径は1.6mmまで。

  • 出力電流40A
  • 入力電圧AC100V
  • 入力1.35kW
  • 負荷電圧22V
  • 無負荷電圧35V
  • 使用率10%

オススメ理由としては、冷却ファンが付いている点です。熱による機器の故障を防止し、安定した溶接作業を行えます。

さらに初心者でも簡単に扱えるよう、付属の溶接面、溶接棒、アースクリップといった、溶接に必要な機器がすべて揃っている点が魅力的です。

ただし薄物の溶接には向きません。薄い板を溶接する必要がある場合は、別の溶接機を使用する点に注意してください。

スズキッド 溶接アイアンワークトライアル

「スズキッド 溶接アイアンワークトライアル SIM-60DIY」は、初心者向けの溶接機器セットです。

溶接機にスターターキット、スタンドバッグ、入門の本がセットになっています。

このセットには、持ち運びに便利な小型軽量の「溶接機アイマックス60(SIM-60)」も含まれているのがポイントです。

ご家庭のコンセントでも使用可能(使用可能な板厚は3.2mmまで)。角型スタンドバッグ(EKB-L-N)は、組み立てが簡単でコンパクトにたためます。

ワイヤで自立する便利なバッグがついており、扱いやすいです。

さらにスターターキット(ST-002)には、前掛け、手袋、溶接棒といった、溶接必携アイテムのオールインワンパッケージが含まれています。

DIYでできるアイアンワーク入門の本も含まれており、初めての溶接に挑戦する方におすすめの入門機種です。

日動工業 デジタルインバーター直流溶接機 BMウェルダー100 BM1-100DA

「日動工業 デジタルインバーター直流溶接機 BMウェルダー100 BM1-100DA」の特徴は、以下の通りです。

  • 超軽量
  • 安定した出力
  • コンパクトで狭所での作業に適している
  • デジタル表示で機能を向上
  • 出張工事や軽天サッシ工事、エレベータ工事に便利
  • 電撃防止機能付

従来のインバーター溶接機に比べ、40%以上の軽量化を実現。持ち運びや作業のしやすさが向上しています。

インバーター方式で安定した出力が得られ、デジタル表示により細かい数値設定が可能。より快適な溶接作業が行えます。

今までの交流機やエンジン式に比べ、非常にコンパクトで軽量なのも特徴的です。狭い場所での作業に適しているでしょう。

また小型かつ軽量・パワフルな溶接機で、出張工事や軽天サッシ工事、エレベータ工事でも便利に使用できます。

安全性にも配慮されており、電撃防止機能が付属。

単相200V専用被覆アーク溶接おすすめ機種

次に、単相200Vで使えるおすすめ機種を4機種ご紹介します。単相200Vであれば、余裕のある作業が可能です。

スズキッド 直流インバーター溶接機 アイマックス180 SIM-180

「スズキッド 直流インバーター溶接機 アイマックス180 SIM-180」の特徴は、以下の通りです。

  • 超軽量でコンパクト
  • 電撃防止機能スイッチ
  • 溶接モード切替スイッチ

スズキッド 直流インバーター溶接機 アイマックス180 SIM-180は、従来の溶接機と比較して軽量かつコンパクトに設計されています。

移動が頻繁に必要な現場作業や、修理営繕作業に最適です。

電撃防止機能は、直流機には法的な義務付けがされていません。しかしアイマックス180 SIM-180は安全性を考慮し、搭載されています。

またMMA(手棒溶接)とTIG溶接を切り替え可能です。アークフォース調整ダイヤルによりアークを安定させ、溶着、アーク切れを軽減します。

さらにTIGトーチセット、TIG棒、アースクリップ、アダプターを購入すると簡易的にTIG溶接も可能です。

軟鋼、SUS鉄鋳物の溶接に対応しており、軟鋼2.0mm~9.0mmまでの溶接に対応しています。

イクラ インバーター制御直流アーク溶接機(電撃防止機能付) ISK-LS200S

「ISK-LS200S」は、以下のような特徴を持ちます。

  • インバーター制御による安定したアーク放電
  • 小型軽量で優れた安全性
  • デジタル表示に対応
  • MMA(手棒溶接)およびTIG溶接に対応
  • 広範囲の溶接対応

ISK-LS200Sはインバーター制御により、安定したアーク放電が可能です。そのため高品質な溶接を行えます。

小型軽量なのも特徴で、移動性が高く現場作業に最適です。

過電流保護機能付きの安全ブレーカーや自動電撃防止機能も搭載しており、安全性が高くなっています。

またISK-LS200Sはデジタル表示に対応しており、無負荷時には設定値、仕様時には実電流と2表示方式を採用。

MMA(手棒溶接)およびTIG溶接に対応しているのも特徴です。対応時には追加商品を購入しましょう。

ISK-LS200Sは軟鋼2.0mm~6.0mmまでの溶接に対応しており、構造物や現場作業、修理営繕に利用できます。

日動工業 デジタルインバーター直流溶接機 “スーパーウェルダー160” BM2160DASP

「日動工業 デジタルインバーター直流溶接機 “スーパーウェルダー160” BM2160DASP」の特徴は、以下の通りです。

  • コンパクトで軽量
  • 高性能
  • 出張作業に最適
  • 安全性の向上
  • 操作が簡単

従来品と比較して、軽量・コンパクトになっています。小型でありながら、プロ仕様の能力は特筆すべきポイントです。

BM-2-160DA(従来品)と同等の性能を持ち、高い溶接品質を実現。高速で安定したアークを維持し、溶接作業をスムーズに行えます。

軽量・コンパクトなので、出張作業や狭所での溶接作業に最適です。また軽天作業や内装工事でも利用できます。

過電流や過熱トラブルにも対応しており、安全に溶接作業を行えるのは安心です。

画面はデジタル表示となっていて、設定値や実測値を確認可能。またワンタッチでの溶接モードの切り替えが可能で、使いやすさに配慮されています。

マイト工業 デジタル直流溶接機 MA-180DF

マイト工業の「デジタル直流溶接機 MA-180DF」は、超軽量・超小型の直流アーク溶接機です。従来機同等クラスに比べ、質量が1/2以下となっています。

軽量・小型であるため、作業現場での移動がスムーズです。

デジタル表示にも対応しており、出力電流設定が正確に行えます。直流出力・デジタル制御で、安定した出力での溶接が可能です。

電撃防止装置も内蔵。ON/OFFスイッチが付いています。溶接前に電撃を防止する仕組みです。

単相100/200V兼用被覆アーク溶接おすすめ機種

次に単相100/200Vを兼用できる、被覆アーク溶接のおすすめ機種を5つご紹介します。

HITBOX アーク溶接機 100V/200V兼用 直流インバーター AT2000

「HITBOX アーク溶接機 100V/200V兼用 直流インバーター AT2000」の特徴は、以下の通りです。

  • 100V/200V兼用
  • IGBTインバーター保護システム
  • コンパクトな設計

100Vと200Vの両方の電源を使えるため、作業場所を選びません。

最先端な保護システムを搭載しており、溶接棒がくっ付きにくく良い溶け込みが得られます。初心者でも使いやすいです。

家庭用のサイズで調節可能なストラップも付いているため、軽量(3kg)かつ持ち運びしやすくなっています。

放熱のプラスチックが前後に設計されており、過熱や過電流の場合には自動的に電源が切れる使用率オーバー防止機能も搭載。

PDF版の日本語説明書があり、商品ガイドとドキュメントのところでダウンロードできます。問い合わせも可能です。

溶接可能板厚は鉄:1.5~6.0mm、炭素鋼:1.5~6.0mmで、家庭用コンセント100V15A接続時には2.5Φまでの溶接棒が使用できます。

最大200V30A接続時には、3.2Φまでの溶接棒が使用可能です。

アーク溶接接地クランプ、溶接棒ホルダーケーブル、変換ラインアダプターが付属。

スター電器製造(SUZUKID)100V/200V兼用 直流インバーター溶接機 アイマックス120 SIM-120

SUZUKID社の「アイマックス120 SIM-120」は、100V/200V兼用の直流インバーター溶接機です。

インバーター制御によりスムーズで安定したアークを実現し、仕上がりの品質が向上。

使用率オーバー防止機能が付いており、使用率を超えると自動停止します。7kgという小型・軽量の設計であり、持ち運びに便利です。

溶接可能な材料は軟鋼、ステンレス、鋳物。家庭用コンセント(100V15A)からの接続が可能で、使い勝手が良いです。

使用可能な溶接棒は1.4Φと1.6Φで、溶接可能板厚は3mmまでとなっています。

溶接棒の選定方法として、溶接棒径からおよそ2倍の板厚を目安に使用するよう推奨。

DIY愛好家や軽量の溶接作業を行う方にとって、適している溶接機といえるでしょう。

マイト工業 100V/200V兼用 直流TIG溶接機 MT-200FDP

マイト工業の「MT-200FDP」は、以下のような特徴があります。

  • ワイドボルテージ機能
  • 小型・軽量
  • 直流TIG・パルスTIG溶接/手棒溶接兼用機
  • パルス機能
  • 高周波スタートおよびタッチスタートの切り替え

入力電圧85~275Vに対応する単相100V/単相200V兼用タイプで、様々な電源で使用できます。

持ち運びに便利な小型・軽量設計となっており、出張工事や移動作業にも最適です。直流TIG溶接およびパルスTIG溶接、手棒溶接も行えます。

パルス機能が搭載されており、高品質な溶接が可能なのも特徴です。

高周波スタートとタッチスタートを切り替えられ、溶接作業に応じたスタート方法を選択できます。

マイト工業 デジタル直流インバーター溶接機 MA-2125DF

マイト工業の「デジタル直流インバーター溶接機 MA-2125DF」は単相100V/単相200V兼用タイプで、幅広い電源環境に対応しています。

質量が従来機同等クラスに比べ、1/2以下の超軽量・超小型。持ち運びが容易です。

使用率60%で耐久性がUPし、長時間の作業でも安心して使用できます。デジタル表示に対応し、出力電流設定が正確で操作性が向上。

直流出力・デジタル制御により、安定した出力が得られます。

溶接可能材料は軟鋼、ステンレス、アルミニウム、銅といった幅広い種類に対応。

イクラ 交流アーク溶接機 アークファン IS-H150WF

「イクラ 交流アーク溶接機 アークファン IS-H150WF」は冷却ファン付き交流アーク溶接機で、小型軽量ながらパワフルに作業できます。

定格使用率が大きくなり、待ち時間が減少。連続溶接時間が長くなりました。

付属品一式が付属しており、すぐに使えるのも初心者に優しい点です。50/60Hz兼用タイプで、100V、200V兼用となっています。

ただし溶接棒は、低電流の「IS-B1」を使用が推奨です。

被覆アーク溶接機の処分方法について

被覆アーク溶接機を購入しても、その後の処分はどうしたらいいのか分からない方もいらっしゃるでしょう。

そこでこの項目では、具体的な処分方法や注意点、買い取りについて詳しくまとめました。

現在古い機種をお持ちで、買い替えを検討している方もぜひ参考にしてください。

被覆アーク溶接機の処分方法や注意点について

被覆アーク溶接機を処分するには、鉄くずでスクラップ処分する方法と買い取りで処分する方法があります。

鉄くずで処分する場合は、各自治体の指示に従い、適切に処分しなければなりません。

自分でバラして部品ごとに分ける作業も手間がかかる上、素人が処分することは危険を伴います。可能な限り専門家に相談することが推奨です。

しかし買い取りの場合は処分費用がかからず、逆にお金が返ってくる可能性もあります。

買い取りできない商品もあるため、事前に問い合わせる必要があるでしょう。また引取先が近くにあればいいものの、遠い場合は輸送する手間も発生します。

重量がある機種だと持ち運びも一苦労なので、事前にどう処分するのかを検討しておかなくてはなりません。

買取できない被覆アーク溶接機と買取可能な被覆アーク溶接機の違いについて

買い取りできない被覆アーク溶接機と買取可能な被覆アーク溶接機の違いは、主に需要や状態によって異なります。

買取可能な被覆アーク溶接機は、比較的需要が高く、状態が良好なもの。

例えばキャスターのついた発電機タイプ、大型のパッケージタイプ、ディーゼルエンジンのものは、不動でも思わぬ高値がつくこともあるでしょう。

一方で買い取りできない被覆アーク溶接機は、需要が低いものです。買い取り業者が再販できなければ、引き取ることができません。

また状態が悪く、修理にコストがかかりすぎる場合や、部品取りとしても価値がない場合も買い取りできない可能性があります。

そのため被覆アーク溶接機を買い取り業者へ売却する前に、状態や需要を事前に確認しておきましょう。

その上で適切な処分方法を選ぶことが重要です。

まとめ

今回は被覆アーク溶接について基礎的な知識から、メリットやデメリット、おすすめ機種などを中心に解説していきました。

溶接機器については、まだまだ知っておきたいことがたくさんあります。

ぜひ、その他の関連記事も読んで参考にされてみてください。