【作業別】インパクトレンチのトルクの目安について解説します
目次
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インパクトレンチを購入しようと思った際、いろんな情報源を参考にすると思います。
しかし、さまざまなブログやネット記事を参考にするほど、『メーカーやオススメの型番などはわかったが、自分の作業に必要なスペックなのか判断ができない』そう感じる方も多いはずです。
ということで今回は、インパクトレンチでできる作業を必要なトルク別に解説していきましたので、ぜひ、皆さんのやりたい作業と照らし合わせて、必要スペックを判断してみてください。
まずはインパクトレンチについて必要や前提知識の部分について、解説していきます。
インパクトレンチとインパクトドライバーの違いについて
まずはインパクトレンチとよく似ている電動工具、「インパクトドライバー」との違いについて解説します。
使用用途の違い
インパクトドライバーとインパクトレンチの最大の違いは、用途の違いです。
インパクトドライバーが「ねじ」を締め付けて固定したり、緩めて外したりする作業を行うための工具に対して、インパクトレンチは「ボルトやナット」を締め付けて固定したり、緩めて外したりする作業に使用します。
もちろん、アタッチメントと呼ばれる先端パーツを取り付けることで、いずれの工具でもインパクトレンチの役割を果たしたり、インパクトドライバーの役割を果たせたりしますが、基本は、使用する先端工具や締付け作業をおこなう対応が異なります。
また、先端工具の形状もインパクトドライバーとインパクトレンチとでは異なります。
インパクトドライバーは先端にビットと呼ばれるプラスドライバーのようなパーツをセットし、チャックという部分でビットを固定させて使用します。
一方、インパクトレンチは先端にアンビルという四角形の形をした棒のようなパーツを、ソケットと呼ばれる部分にセットして使用します。
基本的には、インパクトレンチは手工具でいうところの「スパナ」や「レンチ」の電動工具化したものだと考えてもらって大丈夫です。
ドライバーとレンチの違い
ちなみに、皆さんはドライバーとレンチの違いについてご存知ですか。
実は、締め付ける対象がボルトなのかネジなのかでは、必要なトルク値がことなります。ちなみに、トルクとはボルトやナットを締めたり緩めたりする際の、締め付ける力を表す単位のことを言います。
そして、このトルク値が高い製品ほどプロ用モデルとして販売されていることが多いです。
基本的に、インパクトレンチとインパクトドライバーとでは、インパクトレンチのほうがトルク値が高い製品が多いため、場合によっては、締め付ける力が強すぎ、ネジを舐めてしまうことがあります。
一方、インパクトドライバーは、トルクがインパクトレンチに対して弱く、大きなボルトやナットを回す事ができません。
ただし、製品によっては両方の機能を備えている場合もあります。
たとえば、ボッシュの「GDXシリーズ」は、インパクトレンチとインパクトドライバーの両方の機能を備えています。
あとは、最近のプロ用モデルだと、トルク値が180Nmを超えるインパクトドライバーが主流ですので、先端パーツを変えることで、インパクトレンチとしても利用できます。
ですが、基本的にインパクトレンチとインパクトドライバーには互換性はなく、アダプターなどの拡張パーツを利用しない限り、ネジもしくはボルトのどちらかの締付け作業にしか利用できません。
次にインパクトレンチとインパクトドライバーで出来る作業の違いについて解説していきます。
インパクトレンチとインパクトドライバーの出来る作業の違いについて
先述したとおり、インパクトレンチとインパクトドライバーとでは、用途が異なるため、出来る作業に違いが出てきます。
この項目では、インパクトドライバーとインパクトレンチの出来る作業の違いについて解説していきます。
インパクトドライバーで出来る作業について
まず、インパクトドライバーで出来る作業について解説します。
基本的にインパクトドライバーで利用される作業としては、「ビス締め」「穴あけ作業」「ボルト留め」で利用されることが多いです。
ビス締め
インパクトドライバーが最も輝く作業として、ビスの締め付け作業が挙げられます。
インパクトドライバーを利用することで、プラスドライバーでは、かなりの工程や労力が必要な作業である、複数箇所のビス締めや穴あけを必要とするビス締め作業などを素早く、そして楽に終えることができます。
スイッチと手元のコントロールだかでで、ビスを締め付けることができるので、時間短縮と疲労軽減の効果があり、よく利用されています。
穴あけ作業
インパクトドライバーは締付け作業だけではなく、そのトルクを利用して、木工の穴あけ作業もこなすことが可能です。
たとえば、木工用ビットを使用した場合だと「12〜19mm程度の穴あけ作業」がインパクトドライバーでも行えます。また、ビットロック式からチャック式に変換させるドリルチャックを装着することで、丸軸のドリル刃も利用できますので、より穴あけ作業に特化させることもできます。
ただし、基本的には木工の穴あけ作業がメインであり、インパクトドライバーでは、鉄鋼の穴あけ作業はおこなえません。
また、コンクリートの穴あけ作業は、条件付きで可能となっています。
ボルト留め
ソケットビットを装着すれば、インパクトドライバーでも六角ボルトやナットを留めることができます。
ただし、高トルク値の出力が可能なインパクトドライバーに限ります。もし、トルク値が足らないときちんと締め付け作業が行えなかったり、インパクトドライバーの故障原因にも繋がります。
あとは、様々なタイプのソケットビットが発売されていますので、購入前に対象のインパクトドライバー用であるかを購入前に注意する必要があります。
狭いところでの締付け作業
L字ドライバーのアダプターを使えば、90度の角度を付けて打つことができます。ベッド部分が曲がっているので本体が入らないところで作業する事ができます。
手作業ではないので、力が入れづらい場所での使用にも適しています。
ですが、その場合だとペンインパクトなどを利用するケースも増えるので、時と場合によっては、インパクトドライバーの使用を避けることがあります。
とくに配電盤などの作業では、インパクトドライバーよりもペンインパクトなどの電動工具を利用されることがほとんどです。
素材を研磨する
インパクトドライバーに研磨ビットや回転ヤスリを装着すれば、素材を研磨することも可能です。
塗装の下地作りや木材の仕上げなどの簡単な研磨作業であれば、インパクトドライバーでも行え、特に細かい部品の研磨作業やちょっとした研磨作業であれば、インパクトドライバーを利用することもあります。
研磨ビットの種類も豊富で、ワイヤブラシやポリッシャーなどがありますので、ぜひ、一度、研磨ビットで検索してみて調べて見て下さい。
研磨対象に合わせて最適なアタッチメントを選ぶことが出来れば、ポリッシャーなどを購入せずに済む場合もあります。
インパクトレンチで出来る作業について
次にインパクトレンチで出来る作業について解説していきます。
大型家具の組み立て
インパクトレンチを使用する作業として、大型家具の組み立て作業が挙げられます。
最近は、商品価格を抑えるため、自分で組み立てる必要がある家具が増えて来ました。そして、家具の組み立てにはネジだけではなく、ボルトナットを使って組み上げる家具も多く存在します。
その多くは、六角レンチやスパナなどを利用することがほとんどで、組み立てパーツが多いほど、インパクトレンチを利用することで、作業効率を上げることができます。
ちなみに、大型家具は組み立てた後にボルトを再度締め直したりすることがほとんどありませんので、組み立て時にしっかりと締め付ける必要があります。
そのため、すべての作業を手作業で行ってしまうと、疲労感も強く、また、不慣れな人や非力な人だと組み立てる場合は、締付け力が足りずに取り付けたパーツが外れてしまうこともあります。
そこで、利用されているのがインパクトレンチです。
インパクトレンチであれば、ボルトやナット、六角などの締め付け作業に利用できますので、家具の組み立て作業を仕事にされている便利屋さんなどは、インパクトレンチを愛用して作業をする方も多いです。
自動車のホイール交換
自動車のホイール交換作業を楽にする目的で、インパクトレンチを利用される方はとても多いです。たとえば、スタッドレスタイヤに交換する場合でも利用されますし、自動車整備工場のメカニックさんなども愛用されています。
ホイールは大きな径のボルトナットで車体に固定されていますので、締め付けにかなりの力が必要です。
また、自動車の性質上、必要トルクに到達していないと思わぬ事故に繋がりかねません。
そんなときにインパクトレンチは輝きます。
もちろん、最終工程では、トルクレンチを利用して、適正トルク値であるかチェックする必要がありますが、ホイールの取り外し作業や仮止めなどにはインパクトレンチが利用することができ、とても作業効率を高めてくれます。
ちなみにホイールを固定するナット数は、軽自動車やコンパクトカーなら4本、普通乗用車なら5本、バンタイプであれば6本ナットが固定されています。
これをすべて十字レンチ等を使用して取り外し作業をおこなう手作業でやるとなると、かなりの重労働です。
しかしインパクトレンチを使うことで締め付け・緩め作業を楽に実行でき、ホイール交換を迅速に行うことが可能です。
錆びついたり、固着したボルト、ナットを緩める
インパクトレンチはボルトやナットに一定間隔で衝撃を与え、手作業よりも強いトルクを扱うことが可能です。
サビなどで固着したボルトやナットは、非常に強固に結着しており、なかなか人力では取り外すことができません。
ですが、人力では取り外せないようなボルトやナットでも、インパクトレンチなら、衝撃の力を利用して取り外すことができます。
しかしこの作業は慎重に進める必要があります。というのも、ボルトやナットを破壊してしまう可能性があるからです。
ですが、しっかりと工程を踏むことで、強固に結着した錆びついたボルトやナットを取り外すことが出来ますので、解体現場などでは重宝されています。
【スペック別】インパクトレンチの必要トルクの目安
ここまでインパクトレンチについての前提知識を解説してきました。
そして、この項目ではトルク別にできる作業について解説していきます。
電圧ごとに解説していきますので、ぜひ、これから購入しようとしている製品の電圧数などと照らし合わせて参考にしてみてください。
①7.2V
7.2Vのインパクトレンチは20N・m~30N・m程度のトルクが一般的です。
インパクトレンチのサイズは小ぶりで、ペン型のインパクトレンチなども多いクラスとなります。
パワーを求めず、使い勝手を重視したインパクトレンチが多いと言えるでしょう。
特にペン型のインパクトレンチは、従来のガンタイプでは作業できないような狭い場所で使う事を想定して設計されています。
狭い場所でなくても、軽く細いので、作業のしやすさは抜群と言えるでしょう。
インパクトレンチとしては最も非力な部類なので、トルクが必要な作業には不向きです。
②10.8V
10.8Vのインパクトレンチは70N・m〜100N・mほどのトルクがあるため、DIY用途など本来手作業で行うような締め付け作業では充分なトルクがあります。
サイズや重量も比較的軽量なものが多いので、初心者が購入するのにもオススメなクラスです。
アダプターを使用してインパクトドライバーとして使用するのにも適しているクラスといえます。
価格も安価なのでおすすめです。
③14.4V
14.4Vのインパクトドライバーは120N・m〜175N・mとかなりのトルクを扱えるクラスです。
モデルによっては自動車のホイール交換なども行えるトルクがあるので、それなりの高トルクでの作業をされる方にはおすすめのクラスです。
14.4Vは人気のため、各会社から多くのモデルが発売されているため、選択肢が多いのもおすすめのポイント。
④18V
18Vは130N・m~180N・mと14.4Vと比較されることが多いクラスです。
14.4Vと同様に人気のクラスなので、多くのモデルの中から選ぶことが出来ます。
このクラスを持っておけば、一般の用途で困ることはないでしょう。
マキタやハイコーキなどのメーカーであれば、他の電動工具とのバッテリーの互換性もあるので、バッテリーを使いまわすことも可能です。
⑤36V
36Vはハイコーキが主力として販売しているクラスとなり、200N・mものトルクを扱えます。
一般用途だけでなく、業務で使用するような高トルクを扱う場面でも使用することができます。
モデル自体は多いわけではありませんが、最高スペックの製品が発売されています。
ハイコーキで最もスペックが高いものを使いたい方にはお勧めのクラスです。
⑥40V
40Vはマキタが主力として発売しているクラスで、トルクは220N・mにもなります。
様々な現場で活躍する事は間違いありません。
パワー不足を感じることはなく、マキタの40Vの電動工具でバッテリーの互換性があります。
より良い製品が欲しい!という人にオススメのインパクトレンチといえます。
【トルク別】可能作業の目安
続いてトルク別に可能な作業について解説していきます。
①20N・m~50N・m
「20N・m~50N・m」で可能な作業について解説します。
・ネジ
ネジ締めであれば大体のネジを締めることが可能です。
長いネジや太いネジでも舐めることなくネジ締めが出来るでしょう。
ネジ外しでも活躍し、固着したネジでも緩めることが出来ます。
・ビス
45mm程度のビスであれば、木材に対してビス打ちを行う事が可能です。
45mmを超えるようなネジは、もう少しトルクが無ければ打つ事は難しいでしょう。
・ボルト
ボルト締めはM8程度のボルトなら対応可能です。
ボルト締めは強いトルクが必要ですが、ボルトのサイズによっては低トルクでも作業ができます。
M8以上のサイズや固着したボルト緩めなどはこのトルクでは力不足と言えるでしょう。
・穴あけ
木工でしたら、穴あけ作業も可能です。しかし、3.5mm以上の穴を開けようとする場合は、ドリルドライバーなどのその他の電動工具を利用するほうが、素材の破損などの心配がないです。
②70N・m~100N・m
続いて「70N・m~100N・m」で可能な作業について解説します。
・ネジ
ネジ締めをすることは出来ますが、注意が必要です。パワーが強いので、加減をして作業をしなければいけません。
トルクが強すぎるとネジを舐めたり、木材が破損する可能性があります。固着したネジを緩めることも可能ですが、同様にネジを舐めるかもしれないので注意しましょう。
・ビス
ビス打ちではビスが90mm程度までであれば可能です。それ以上のサイズには更に強いトルクでの作業が必要になります。
・ボルト
70N・m〜100N・mでは、ボルトがM12程度までであれば作業可能です。DIY用途ではこれ以上のサイズを扱う事も少なく、充分のトルクといえます。
・穴あけ
70N・m〜100N・mでは6.0mmほどの穴あけ作業が可能です。木材に対してだけでなく、鉄工ドリルを使用した金属への穴あけ作業を行う事ができます。
③120N・m~150N・m
続いて「120N・m~150N・m」で可能な作業について解説します。
・ネジ
120N・m~150N・mクラスでは、ネジ締め作業は不向きと言えるでしょう。
ネジが舐めてしまう可能性が高く、材木も破損してしまう危険があります。もしパワー切替機能があれば、最も弱いモードを使用することで安全に作業可能です。
ネジ外しも問題なく行えます。ですがパワーが強すぎるので、舐めないように注意が必要です。
・ビス
木材へのビス打ちは、最長125mmまでの全てのビス打ちが可能となります。木材を痛める可能性もあるので、注意が必要です。
・ボルト
ボルトを締めるのもM16程度まで可能となります。現場や業務用途での作業も充分に行えるトルクと言えるでしょう。
・穴あけ
木材への穴あけであれば50mm程度の穴を開けることが可能です。鉄材への穴あけも可能で、直径20mmの穴を開けることができます。
ただし、鉄鋼の穴あけ作業の場合は、インパクトレンチの性質上、素材を破損させてしまう場合がありますので、注意が必要です。
④160N・m~180N・m
続いて「160N・m~180N・m」で可能な作業について解説します。
・ネジ
ネジ締め作業、ネジはずし作業は不向きと言えるでしょう。ネジが舐めてしまう可能性が高く、材木も破損してしまう危険があります。
調整機能が無い場合は使用しない方が良いといえます。
・ビス
木材へのビス打ちは、最長150mmまでのビス打ちが可能となります。木材を痛めてしまう可能性が高く、注意して使用しましょう。
・ボルト
ボルトを締めるのもM18程度まで可能となります。鉄橋など特殊な用途での利用でなければ、大体の作業は行えます。
・穴あけ
木材への穴あけであれば70mm程度の穴を開けることが可能です。鉄材への穴あけも可能で、直径30mmの穴を開けることができます。
⑤200N・m以上
最後に「200N・m以上」で可能な作業について解説します。
・ネジ
このクラスではネジを扱わない方が良いでしょう。舐めてしまってネジが使用出来なくなってしまいます。
緩める作業も同様ですので注意しましょう。
・ビス
木材へのビス打ち自体は多くのビスを扱えますが、舐める可能性が高いです。また、かなりの確率で木材を痛めてしまうので注意が必要です。
・ボルト
ボルトを緩める作業には活躍します。固着しているボルトでも簡単に外すことができるでしょう。
しかし締める作業には注意が必要です。ボルト自体を痛めてしまう可能性が高くなります。
・穴あけ
木材や鉄材の穴あけは、50mm以上の穴を開けることができますが、使用する素材によっては別の電動工具を利用するほうがスムーズに行える場合も増えてきます。
まとめ
今回は、インパクトレンチでできる作業を必要なトルク別に解説していきました。
インパクトレンチについては、まだまだ知っておきたいことがたくさんあります。
ぜひ、その他の関連記事も読んで参考にしてみてください。
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